PAプログラムには各グループにファシリテーターがつきます。PAプログラムのファシリテーターは何をするためにいるのでしょうか?


PAJスタッフのあゆみが今秋よりファシリテーターとしてひとりだちするためのOJTを開始しています。いままでは企業研修や学校プログラムのコーディネーターとしてプログラムに同行していましたが、見るのとするのには大きな違いがあるようです。

この記事ではあゆみの体験や感じたこと、トレーナーとの関わりを通して、PAファシリテーターになっていくためにどんなことが必要なのかということを考えていきたいと思います。

ファシリテーターの役割

PAプログラムでは、ファシリテーターと参加者が一緒に場をつくっていきます。そのため、ファシリテーターの場の設定や関わり方が重要なキーとなってきます。知識、スキル、経験、そしてファシリテーター自身がどのように自分自身を捉え、自らも学びながら進んでいこうとしているのかが大切な要素です。

ではファシリテーターはどんなことができる人なのでしょうか?何ができるようになるとファシリテーターとしてグループを受け持ち、プログラムの場に立つことができるのでしょうか?

100%の正解がない

安全を確保するテクニカルスキルは、技術のチェックをすることはできますが、ファシリテーション面は、「50mを◯秒以内で走れたら合格」というようなはっきりとしたラインを引くのが難しいです。

PAJではPAプログラムのワークショップ受講、ファシリテーター向けエントリートレーニングの受講、プログラムをトレーナーと一緒に担当するOJTを通して、段階的にファシリテーションをしていきます。

まずはグラウンドレベルでアクティビティができるか、ローエレメントやハイエレメントを使った学びの場を提供できるか、それと並行して、全てのPAプログラムの根底にあるフルバリューやチャレンジバイチョイス、体験学習のサイクルの理解と実践についても大切な項目です。

何があればファシリテーターとして最低限いいのか?

PAファシリテーターとして学ぶことはたくさんあります。最初からベテラントレーナーと同じことができるわけではありません。

その中で一番大切なことは、PAの理念の実践と安全確保です。PAの理念の実践は、フルバリューやチャレンジバイチョイスをプログラムの中に折り込んでいくこと。そしてそれを自分自身にも照らしていくことです。自分自身がフルバリューを尊重し、向き合うことが、PAファシリテーターをするうえで重要な部分になっています。そしてプログラムは心身ともに安全を確保して行わなければなりません。

そのうえで、PAプログラムのアクティビティやエレメント、ふりかえりのレパートリーを増やしたり、シークエンスの組み方、アセスメントや関わり方のスキルを磨いて行って欲しいと考えています。

あれもこれも学ばなければならない!と焦ってしまうエントリーファシリテーターもいるのではないかと思います。PAで大切にしている理念を中心に据えて、自分なりの「PAプログラムファシリテーション」を学んでいってほしいと思います。

初めてのOJT

あゆみのOJT一本目はトレーナーのてつと一緒に中学生の半日プログラム。その中でアクティビティをいくつか担当しました。初めてのOJTを終えたあゆみに後日話をきいたところ、「難しい部分があったけれど、楽しかったです!」といい笑顔で言っていました。その笑顔をみて、まず、トライしてみることを楽しいと思えるのは大事だなと思いました。その日の様子をあゆみにきいたことをもとに4コママンガにしてみました。

事前にアクティビティのやり方を予習していたあゆみですが、実際にやってみると抜けていることや場のつくりかたに課題を感じたようです。4コママンガにあるように、アクティビティを始めたものの、終わり方まで考えていなかった。他のグループをみたら、10, 9, 8…とカウントダウンで終わりにしているのを見て、「なるほど!」と思ったそうです。やってみて、あ!と思うことってありますよね。

やってみて気づく:トレーナーからの視点

そんなあゆみの話をてつとしたところ、

てつ(トレーナー):

『ファシリテーションは、実際にやってみて気づくことがいっぱいある。次にファシリテーションするときは、きっと終わり方も考えると思います。ファシリテーター自身が体験学習のサイクルを生かして学んでいくことが大切です。

OJTのトレーニーと一緒にグループを持つときは、アクティビティの説明をききながら、ドキドキすることもあります。「いまのでほんと伝わっている?これでグループは活動ができる?」と思うことも…。

介入するかどうかは状況によります。僕がきいていて「ここをおさえていないと活動が成立しないんじゃない?」と思うときは、ルールを確認する質問をして、補足の説明を促します。

エレメントや活動のバリエーションはたくさんあるから、トレーニーの発言がどこまで意図されたものなのかはわからない場合もありますね』

とのことでした。

一緒に楽しむ気持ち

トレーニーがPAプログラムでアクティビティを選択するとき、まず外せない部分は、なんでしょうか?それは、「一緒に楽しめそうかを考える」とのことでした。

てつ:

『「楽しさ」って大事。必ずしも笑い合うことが必須なわけじゃないけど、楽しさは参加者の心身を揺さぶり、温めます。心身が温まると、参加者が自ら動き出しやすくなります。自ら取り組むということは、アドベンチャーへの大切な一歩。誰かにやらされているという受動的な態度では、アドベンチャーに向き合えず、学びは起きづらいですから。

場に不慣れなトレーニーは緊張しがちです。その緊張は参加者に伝播します。だから、活動のレパートリがー乏しいトレーニーの場合、プログラムの導入部分(アイスブレイク)では自分がその活動を対象者と楽しめそうかという視点で活動やルールを選択することをオススメします』

確かに、自分も一緒に楽しめないようなら、それは「やらせている感」がいっぱいになったり、楽しい雰囲気になることも難しそうです。

●参加者がアクティビティを楽しめない原因●

①ファシリテーター自身が一緒に楽しめていない。

②インストラクション(説明)が不十分で、やることが不明瞭になっている

③参加者の感情が無視されている(不安、緊張、恥ずかしさ、など)

④ファシリテーターがやらせたいことにをやっている(参加者のニーズにあっていない)

てつ:

『「参加者のみんなと楽しみたい」というファシリテーターの思いと行動は、参加者とファシリテーターのフルバリューな関係を築く一歩になります。ファシリテーターとして参加者の様子を見立て、観察し、学びを意識した働きかけを行うことことはもちろん重要ですが、参加者とファシリテーターが一緒になって学びの場をつくってために、ファシリテーターは自身の感情を捉え、それが場に及ぼす影響を常に意識していて欲しいと思います。

とのことでした。あゆみのOJT2回目についてはまた次回!

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