PA, Inc.(プロジェクトアドベンチャー本部、アメリカ・マサチューセッツ州)では、ケイトリン・マコーミック・スモール(Caitlin McCormick Small)が、エグゼクティブ・ディレクターに就任しました。ケイトリンは、2019年にSEL(社会性と情動の学習、Social and Emotional Learning)のディレクターとしてPA, Inc.に加わり、2020年5月から代表になりました。

PA, Inc.の就任アナウンスはこちら:https://pa.org/new_executive_director.html

SELをPAに

ーーなぜSELをPAプログラムに適用させようと思ったのですか?

PAでSELを活用しようというアイデアは、私がPA, Inc.に入る前からありました。理事会メンバーやRichard Ross(前エグゼクティブ・ディレクター)は、いまのアメリカの教育業界の大きなニーズはどこにあるのかを探っていました。SELはアメリカの教育業界のバズワードで、トレンドでした。

いまでは、SELと呼ばれていますが、その内容はそれまで教育業界でずっと行われてきたことです。「発達心理学」などの分野で行われていたものが、SELと呼ばれるようになりました。アドベンチャーはSELを教えるのにパワフルなツールです。

ーーなぜSELに興味を持ったのですか?

私は、長い間、放課後の子ども向けのプログラムやメンタリング(ここでは上級生と下級生がペアになり信頼関係を醸成するプログラムを意味する)など、学校のユースプログラムを行っていました。そのときにはまだ「SEL」とは呼ばれていませんでしたが、やっていたことはSELでした。

若い人がレジリエンシー(回復するちから)を育んだり、コミュニケーションの方法を学んだり、一緒に活動することを学んだり、共感を実感できるようなプログラムをしていました。

若い人たちが感情的に健康で、社会的で健やかなつながりを育み、健全な方法で成長することを身につけるために、子どもたちと直接、関わってきました。その後、ファシリテーターやコンサルタントとして先生たちのトレーニング、学校のシステムづくり、SELプログラム実践などの手助けをしてきました。

PA, Inc. のSELのディレクターの募集をしていたとき、PA, Inc. の中には、SELについて詳しい人がいませんでした。私はアドベンチャーについては何も知りませんでしたが、ずっとやってきたことを応用できると思いました。

PAの強みを生かしたSEL

ーーPAのSELと一般的なSELとの違いは?

アメリカでは、鬱や不安、怒りなど、メンタルヘルス不調の問題がどんどん増加しています。生徒に対して何かしらの支援をしなければいけないことは教育関係者も分かっていますが、多くの人が具体的な方法がわからないのです。「うちの学校の生徒には問題解決の能力が必要」と思っていても、その支援の方法を学校は知らないのです。

生徒たちがSELのスキルを得るためには支援が必要です。アドベンチャーは、SELのスキルを育てていくために、刺激的でユニークな手法だと思っています。

グループ体験は、座って本を読むことが苦手な若者や、「こうするべき」と大人に言われたくない若者に有効です。体験の中から自分たちで気づき、自らスキルを育て、ふりかえることができます。

PAに入りたての頃、いくつかのPAワークショップに参加しました。PAスタッフがつくった「SEL through Adventure」に参加しましたが、とても素晴らしく、「これだ!」と思いました。このプログラムを使って、学校などに対して大きな貢献ができると思いました。

この仕事に魅力を感じたひとつの理由のは、私が前職でつくってきたSELのカリキュラムとPAのアプローチに類似点があることでした。メンタルヘルスの視点だけではなく、そこにはたくさんの哲学が詰まっています。アドベンチャーは、「自分とは何者か」を理解し、「どのように学ぶ必要があるのか」を探っていけるものだと思っています。

リーダーシップを発揮する喜び

ーーなぜPA, Inc.のエグゼクティブ・ディレクターになることを選んだのですか?

私は「リーダーシップ」を発揮するのが大好きです。前職では、チームをスーパーバイズし、クリエイティブに新しいものをデザインする機会に恵まれました。私はその経験をとても大事にしていて、新しいものやアプローチを創ることと、それをしている人々を助けることをしたいと思っています。

また、非営利団体のマネジメントにもとても興味があります。どのようにしたらよい形で組織が動けるか、その組織のミッションを明らかにし、なぜその組織は存在しているか、そのミッションをもとに何をつくっていくか、その組織にいる人達のモチベーションをどうあげていくか、エンゲージメントをどう高めていくか、組織の外とどうパートナーシップを取っていくか、寄付金をどう集めていくか、それらを全てマネジメントしていくことにとても興味があります。

特にいまはCOVID-19の中で新しい方向性をつくっていかなければなりません。PAの新しい方向性を探り、未来を見つけ出していきたいです。

私は人をリードしていくのが好きです。PAで働いている人たちはとても情熱的で、スマートでクリエイティブ。そこを生かして、この組織をより健康的なものにして、みんなが一緒に働いていこうと思える場所にしていきたいです。

エグゼクティブ・ディレクターになったと思ったら、ウィルス・ウィルスで…!どうなるかわからないエキサイティングなチャレンジです(笑)

組織をファシリテートしていく

ーーPA, Inc.全体をファシリテートしていく難しさはありますか?

いまだに過去の財政的な問題を抱えています。またコロナがあり、この数ヶ月、ほぼ100%の仕事を失いました。対面でプログラムができない中、どうやって学校や生徒と繋がり続けていくかに注力しています。

ーーPA, Inc.には長い歴史があります。新しい扉をあけるのに、それが邪魔することはありますか?

PA, Inc.は、来年、50周年です。PAには豊かな歴史とたくさんの財産や知恵があります。これは大切にすべきものです。でも留まってずっと変わらずにいるわけには行きません。

そういう意味では、PAの外からやって来た私の持っている、アドベンチャー以外の教育や青少年関係の分野での知識をPAに持ち込めるのはプラスの要素だと思います。

先日、かつてPA,Inc.で働いていた「PAアルムナイ」と呼ばれる人たちと小さなミーティングをしました。1970年代にいた人や10年前にいた人などが集まりました。

そこでは、PAでしていたこと、そこにどんな価値があったか、そして未来についてなどを話し合いました。いままでを知る人たちとつながることは大切です。彼らは自分がいま、ここにいないこともよくわかっていて、そのうえで新しい方向性に興味を持ってくれ、PAをとても大切に思ってくれています。

ーーPA, Inc. をどんな風に変えていきたいですか。

PA, Inc. を変えようと思っているのではなく、「焦点の合わせ直し(refocusing)」をしたいです。

PA, Inc. ができることは、たくさんあります。PAプログラムは、学校教育、企業研修、スポーツチーム、メンタルヘルス、チャレンジコースなどさまざまな分野に関わることができます。

でも、私たちが世界でどんな変化を起こしたくて、何に焦点をおいてやるのか。なぜ私たちが存在するか、私たちがいることでどんな違いを生み出せるか。そのためにエネルギーをどこに集中して使うのかを考えていきたいのです。

財政的な問題やウィルスがあり、私たちが持っている時間やリソースは少ないです。いろいろやりすぎると、多くのことを少しずつやることになります。私は少しのことに大きく注力していきたいです。

人と共に

ーー好きな言葉は何ですか?

PAで働く前から「アドベンチャー」です。私は「変化中毒」なんです(笑)。常に成長していたいし、新しいことに挑戦していたいし、よりよい人になりたいと思っています。「アドベンチャー」はそのための素晴らしい要素です。

若い頃は旅をたくさんし、クレイジーな仕事をしてみたり、農場にいたりしました。いまも夫と自分たちで家を建てたりしています。新しいアドベンチャーをしていくことは人生の中でとても大切なことです。

ーーPA, Inc.で働くうえでのケイトリン自身の強みは何ですか?

コミュニケーションのちからです。チームの中でのコミュニケーションも、外とのコミュニケーションもどちらも大事です。

チームの中でどのようにつながっていくか、外に向けて自分たちが何者であるか、何をしているかを伝えていくためにもコミュニケーションが重要になります。

ーーチャレンジコースで好きなエレメントは何ですか?

「クアドロフィニア」です。4人でポールに登って、一番上に立ってバランスをとるものです。みんなと協同する部分が好きです。

PAに入ったばかりのとき、ABCワークショップに参加しました。5日間の最終日の最後のチャレンジが「クアドロフィニア」でした。

私は高い所はそんなに苦手ではなく、ストレッチゾーンという程ではありません。でもチームには高い所がとても苦手な人もいました。その中でお互いを頼りながらポールに登り、一番上にあがったとき、みんなとのつながりを感じました。

お互いの手を握り、身体を外側に倒しバランスをとり、そして手を離していくのはとてもよい体験でした。いまでもそのときの3人とは連絡をとっています。それくらいパワフルなひとときでした。

人といるとき、相手の感情に触れたり、お互いに頼ることを学んだり、ひとりではできないことを一緒にすることができます。私は、そういうことに心が強く掴まれます。

(20200708)「Being−あり方を探求するメディア」より転載。

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