非常勤ファシリテーターのりょうちゃん(藤樫亮二)。幼稚園と大学で働く他、さまざまなプログラムを担当しています。りょうちゃんの考える「自然体」とは。


PAとの出会い

大学2年生のとき、玉川大学のTAP(玉川アドベンチャープログラム)に出会いました。2000年に玉川大学にロープスコースができて、大学4年生のときにインターンとして高校生や小学生のプログラムを手伝っていました。大学を卒業した後、アメリカに留学したときにABC(アドベンチャーベースドカウンセリング)ワークショップを受けました。

アメリカでワークショップに参加することはすごいチャレンジングで、今でもよく覚えています。PAやアクティビティは他の参加者よりも知っているから、ルールとかはわかる。けれど毎回ふりかえりの度に「I can’t explain in English…(僕は英語で説明できないんだけど・・)」と言い訳をしてから話し始めていたんです。

そうしたら3日目のふりかえりのときにファシリテーターのマークに、「日本語でいいから思ってることを喋ってみてくれ」と言われてグループの前でとにかく日本語で話しました。何分話したかも分からなくて、とにかくわーっと話して・・。それをみんなが聞いてくれたんですよね。

それで肩の荷がストンと降りました。あとになってあれがカウンセリングされたということかと思いました。自分の殻が一個剥がれて、そこからずっと対等にみんなの仲間に入れてもらった感じがしたんです。それが一番印象的です。

だから今でも言葉にならない人の気持ちには寄り添える気がします。言葉で説明できない人は書いていいよーとか、喋らなくてもいいから自分で自分の表現しやすい方法でして、と伝えたりします。

PAの魅力

PAの魅力は、「楽しいから」と言ってしまうと軽いですが、楽しいところです!毎回いろいろなドラマが起こるのが楽しいし、涙あり笑いありです。

関わるのが苦手、こうなりたいけれどなれない自分という壁みたいなものを持っている人がいます。いろいろな体験をしたり、人のふりかえりを聞くことで、ここはチャレンジしてもいいんだと思えて、その壁を越えていく場面に出会えるんです。その時の「来たーっ!」という感じが楽しい。

4月のクラス作りプログラムだと、はじめましての緊張感があっても半日で笑いに変わっていったり、肩を組んで帰っていったり。そういうお手伝いができるのは純粋に嬉しいですね。

種を蒔く

昔は「この時間内でかぼちゃをたくさん作らないといけない」というような頭でファシリテーションしてしまっていたこともありました。そうするとすごく作為的な問いかけや誘導になってしまいます。そうやって収穫したものは果たして美味しいのかと考えてしまいます。そもそも熟れていないのに収穫してしまったり・・。

いろいろなファシリテーターと出会う中で、最近は「自分が気づくタイミングで自分の収穫物を取ってね」というスタンスでいるようになりました。

留学していた大学のアドベンチャーセンターのTシャツに「Plant the Seeds of Positive Change−ポジティブな変化の種を蒔こう」という粋な言葉が書いてありました。

僕らのしていることは種まきだと思うんです。「これが咲いたらいいよ」という種は蒔くけれど、咲く、咲かないはよろしくねと預けます。早い人はその日のうちに咲くし、1ヵ月後、1年後に咲いたり、5年後に別の人が似たような種を蒔いたときに、「あー、もう1個あった」と気づく、そんな感じでいいんだと思います。

自然体を広げる

人と接するうえで大事にしてることは「自然体」ですね。よく見られようとか、うまいことやろうと思うと疲れてしまいます。前は結構気にしていたと思いますが、30半ばを過ぎ、そういう見栄みたいなものは張らずに済むようになってきました。だからファシリテーションのときも、日常もそんなに変わらずにいたいです。

がんばってファシリテーションすると疲れてしまうし、かといって日常でがんばりすぎても疲れてしまう。僕自身はフラットな感じでいたいし、今、日常の自分とファシリテーターをしている自分はかなり重なっている感じがあります。

できていることだけで完結しない

「やり方とあり方(DoingとBeing)」だと、あり方が大事という話をよく聞きます。僕もそう思っているし、実際にもそうなんですが、あり方を磨けば磨いただけ、今度はいろいろなやり方、テクニカルな部分、スキル、知識がもっと必要になると思うんです。

PAのアクティビティを提供するのに慣れてきて感覚的にやれるようになると、いつも同じタイミングで「キャッチ!」と合図を出していたりとパターンみたいなものが出来てきます。でも、もしかしたらワンテンポ遅らせてみたら変わることがあるかもしれません。

自分の感覚や暗黙知でやっていることを一回、形式知に変えて、やり方やタイミングを変えてみたものを練りに練ってみる。そして知識や理論にもう一回乗せてみて、自分の感覚でそれを使ってみるというのをやっていきたいです。そうやって気をつけていかないと今の感覚のままずっと同じファシリテーションしてしまうだろうと思います。

今持っているものだけでやっていると、エッジ(今の自分の範囲)を越えない。完成形の自然体というのがどういうのかは分かりませんが、自然体になるために「どこか不自然な自分」へのチャレンジもいっぱいしてかないと、自然体の幅は広がっていかないなと思います。不自然な、ちょっともぞもぞするやり方、あり方みたいなものにも日々トライしていきたいと思っています。日々修行ですね。

(20180530)

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