インタビュー#115「体育を通したPA実践」

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日本で初めて学校の体育館にロープスコースを設置したトキワ松学園中学校高等学校の中山正秀校長にお話を伺いました。

体育館にあるロープスコースの利点

ーーどのようにロープスコースを使用していますか?

トキワ松学園では体育館にロープスコースを設置しています。体育科の教員がPAの研修を受けており、主に体育の授業で使用しています。

体育館にあるのは正解だったと思います。天候や気温に影響を受けず、劣化が遅い。ときにはもう少し高さがほしいと思いますが、7m程度あるので、中高生のスタートには十分の高さです。

体育の授業での活用

ーー他の学校の先生と話していると、「PAをやりたいけれど、どこに組み込めばいいのか」と悩まれている方がいます。教科の中では、PAを何に置き換えていますか?

ゲームからローエレメントまでは体ほぐしの運動に変えて「プロジェクトアドベンチャー」としてカリキュラムに取り入れ、授業中に行っています。

ーーハイエレメントはどのように使っていますか?

クライミングウォールはほとんどの生徒が中1でやります。その後、進級するごとに徐々に他のエレメントを取り入れていきます。

クライミングウォール、ジャックと豆の木、ハシゴの3つを主に中学生で使います。クライミングウォールはルートもレベルも自分で選ぶことができ、いっぺんに複数人がチャレンジできるので授業に行うこともあります。

高3では集大成としてジャイアントラダーをやります。基本的にハイエレメントは放課後に時間をとって希望者を募ってやっています。特にジャイアントラダーは一度にたくさんの生徒が挑戦できないため授業内でやるのは難しいですね。

体育以外での活用

エレメントは使いませんが、学校説明会でもパイプラインなどのアクティビティを取り入れています。また新年度の中1、高1では、私がオリエンテーションの時間(1−2時間)を担当しています。生徒と打ち解けるのにはいいですね。

ーー校長先生と生徒の距離がぐっと近くなりますね。

すごくオーバーアクションでやるので、生徒は笑っていいのか悪いのか迷ったり(笑)。はじめはお互いに話せない状況ですが、生徒同士も私たち教師ともすごく打ち解けます。また教員全体の研修で取り入れたり、保護者とプログラムをしたこともあります。

学校での導入の懸念

ーー導入のきっかけは?

PAJができてすぐの頃、体育科の教員がPAを見つけてきました。今思えば管理職がよく許してくれましたね。職員会議にPAJトレーナーが来てくれて、PAの効果などを説明してくれました。

ハイエレメントは器具を使って高所にあがります。その部分は管理職には本当に安全性が担保できるかという懸念があったと思いますが、体育はそもそも跳び箱など細心の注意が必要な器具を使います。そういう意味では、ビレイロープをつけるハイエレメントはしっかりチェックして行えば大きな怪我もないということを理解してもらえました。

ーー体育科の教員が講習会を受けた後、どう使っていこうと思いましたか?

授業の中でやっていくにはどうしたらいいだろうという懸念がありました。教師1人に対して30数人のクラスで安全確保ができるだろうかと悩みました。

でも工夫次第です。講習会で学んだことからできるものとできないものを仕分けして、できるものをどんどんやって行けばいいと思いました。

いまハイエレメントも含めて授業で使えるアクティビティは100個、その中で普段よく使うものは20個くらいです。

導入後の変化

ーー導入してからの変化はありますか?

女子校なのもあり、体育が苦手な生徒が多いです。「こんなことやって何の意味があるんだ」という生徒もいます。体育の中で、PAの4つの約束(安全に、公正に、正直に、楽しく)から始め、「お互いの関係をつくる」「意見を出し合っていく」についての話をするので、目標が見えやすく、受け入れやすいです。それは女子校ならではかもしれません。

PA導入時は、おとなしい生徒などがやってくれるかなという心配もありました。PAには「チャレンジバイチョイス」がありますから、最初はやらない子もいました。

そうすると周りが少しずつ誘いに行ったりします。「無理しなくていいよ、やれるようになったらやろうね」と教師がいうと、周りの生徒が「やろうか?」と声をかけてくれたりするんです。そうやって引き込んでくれるんです。そういう意味では周りの生徒も成長しているんだと思います。生徒が大人になるきっかけをPAがつくってくれていると、いろいろな場面で思いました。

体育とPAの関係

PAが目指していることは体育の本筋と変わりません。ただ身体を動かすのではなく、何を目的にやっているのかということを意識できるので、すごく学校教育に向いているものだと思います。

ーー体育の本筋とPAは離れていないとのことでしたが、体育の本筋は何ですか?

競技を覚える、技術をマスターするだけではなく、自分で目標をつくってそこに向かって努力したり、この活動によってどういう物の考え方ができるかということが大切です。体力や技術よりも、そこから何が得られるかを明確にすることが大事だと思っています。

もともと、体育はできる生徒の点数が高くなる傾向があります。その評価に疑問を持つ生徒もいます。それは当然だと思います。絶対的な評価ではなく、生徒がいまの時点からどれだけ成長したかを考えていきたいですね。

例えば全身を使って物を投げることを覚えると、運動能力全体が高くなります。なるべく自分の成長が実感できるやりかたをすることを大切にし、「いまこの時間は何を目標にするか」を明確にして、納得して取り組むこと、それが本当の体育だと思います。

PAのアクティビティにもそういう要素があるので、まさに同じです。しっかりと自分がしていることを理解していくような授業づくりをするのにPAはよいと思います。

体育以外での活用

ーー今後はどんなふうにPAを活用していきたいですか?

PAを導入した当時は、体育でスタートするけれど、他の教科やクラス運営でも活用していこうと思っていました。しかしいまやっているのは、体育とプラスアルファくらいです。クラス運営も含めて、教師の教えるスキルとしてPAの要素を持っていて欲しいと思うので、PAをトキワ松学園の教員に使ってもらう機会をもっと増やしていきたいと思います。

PA原体験

ーー中山先生がPAの講習会を受けて印象的なシーンは?

AP(アドベンチャープログラミング、5日間コース)でジャイアントラダーをやりました。

20代の女性とペアだったので、30代の僕が助けてやろうと思っていたのに、彼女がリードしてくれて最後引っぱり上げてもらったんです。お互いに身を預けるくらいじゃないとできないんだと身に沁み、すごく印象的でした。男だからときばった自分が間違いでした(笑)

ーー高3の子たちがジャイアントラダーやっているときどんなですか?

すごいです。諦めようとする気持ちと頑張ろうとする気持ちや葛藤が目に見えるのでいいですね。上の方で遠慮する人、大丈夫だよ行けるよ、無理しなくていいよなどの声がきこえてきます。みんなに一度は体験してほしいです。

探究女子☓PA

トキワ松学園では「探究女子」をテーマに掲げています。課題を見つけてそれを自分たちなりに考えて他の人たちと分かち合って次の答えを見つけていきます。

PAでも課題があって、どうやるか考えて、みんなで相談しながら活動していくので、同じようなプロセスです。PAは「探究女子」の探究を育てるちからのひとつになっています。

PAの課題解決型アクティビティは、どう話し合うかが一番大きいところであり、これは思考力教育にもつながります。トキワ松学園では、体育でも話し合う機会を持っているので、生徒が恥ずかしがらずにできるようになりますね。上級生になると話し合いがとても上手になります。

卒業して大学生や社会人になってから、自分でやっている活動で使いたいから、あのときのPAのやり方を教えてと卒業生がききにきてくれたりするのも嬉しいですね。

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