はじまりは必要に迫られて

プロジェクトアドベンチャージャパン(PAJ)のオンラインプログラムは、2020年3月から、コロナ禍の中で、「必要に迫られて」始まりました。

オンラインのノウハウを持たなかった私たちは、最初はPAJ非常勤ファシリテーターの皆さんとオンライン・アクティビティ開発の場を設けたり、一般向けの「座談会」という形でおしゃべりする場をつくることから始まり、その後はさまざまなオンラインの場を企画してきました。

プロジェクトアドベンチャー(PA)は「体験学習」です。体験をベースにした気づきや学びを大切にしています。このため直接的な体験(グループでアクティビティをする、対話するなど)を提供し続けてきました。

この春、ほぼ全てのプログラムが中止となり、創業25年で初めて、対面での「PAプログラム」ができなくなりました。そんな中、PAJアドベンチャーエデュケーション部門は、オンラインという大海原に漕ぎ出しました。

この記事は、PAJのオンラインプログラムのいまを、私の目線で見たり、考えたり、スタッフと話したことをもとに3回シリーズでお届けします。

PAってなんだろう

PAJでは以前からずっと「PAはアクティビティをやることだけではない」とお伝えしてきました。そうは言っても、アクティビティや何らかの体験を中心にプログラムを行うことが殆どです。

対面でワークショップやプログラムを提供することが難しくなったいま、改めて「PAとは何か?」が問われています。

私たちは「PA=アクティビティ」ではなく、広い意味で「PA=生き方」であると考えています。そこを支えるのがフルバリューであり、チャレンジバイチョイスです。

フルバリューとチャレンジバイチョイスを大事にしながら、一人ひとりの学びや成長をどのようオンラインで実現していけるのでしょうか。

オンラインのよさ

オンライン上で何か活動しようと思うと、その多くは、身体ではなく、頭を使った活動に寄りがちです。人と人が身体的に触れ合うことはできません。

また、いままで対面でしていたことを、そのままオンラインですることは物理的に難しい。全く別物としてとらえ、しかし私たちが大切にしていること(※)はキープしていきたいです。

オンラインの一番のよさは「手軽さ」かもしれません。PAJは東京に拠点を置いているため、多くの参加者は関東近郊在住者です。今回のオンラインプログラムでは、さまざまな地域の方や普段では出会う機会のなさそうな人たちが多数参加してくれました。物理的に遠かったり、家庭の事情がある方などからは「いままではなかなか参加できなかったけれど、オンラインなら参加できる」という声をいくつもききました。

オンラインにできないこと

オンラインでできないことの一番は、「触れ合い」です。お互いの身体に触れ合うことはできません。またオンラインは、身体的だけでなく、感情的な部分でも触れ合いを感じとりにくいツールです。

この部分は、実際にオンラインに参加してみて歯がゆく感じる部分でした。今までなら、グループは心身を使って活動をします。また、グループが活動したり話し合っているとき、ファシリテーターがグループの空気感や表情、声のトーンなどをみています。そしてその情報をもとに、グループに介入したり、プログラムを修正していきます。

グループが動き、ファシリテーターが共に在る、その中で生まれるものがたくさんあります。そういうものを生かすには、できることは最大限にやりつつですが、現状ではオンラインでは難しいと感じました。

それでも、オンラインでできること

PAJ主催のオンラインプログラムを取材する中で、オンライン上なのに徐々に場があたたまってくるのを何度も感じました。オフラインでもオンラインでも、人が人とつながろうとする大きなちからがあります。

これは講師が一方的に話す形式では生まれにくいと思いますが、オンライン上で小グループに分かれて話し出すと、人はつながろうとし、つながっていけるように思います。

ただ、この「つながろうとする」ことについては、対面のときよりもみんなが「つながろうとすごく意識している」からできるのかもしれないと感じました。

多くの参加者に「いろいろ話せてよかった」「つながりを感じた」と言ってもらえているのですが、私はまだ、すっきりしていません。対面での体験にこだわりすぎているからかもしれません…。つながろうとすることは決して悪いことではないのですが、「気づいたらつながりができていた、関わっていた」という「うっかり感」は、オンラインにはないのかもしれないと思いました。

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(オンラインーワークショップの様子)

手を動かす

PAJワークショップのひとつ「Playful toolbox LABO」オンライン版「アクティビティグッズを作ろう!Ring to Ring編」を見学した時のことです。

「Ring to Ring」というアクティビティに使う道具を作りながらおしゃべりしたり、どんな使い方ができるかみんなで話すワークショップです。一人ひとりがそれぞれの場所で手を動かすことで話の輪が広がっていきました。

同じ場所にいないうえに、みんな個別に物作りに没頭しているのですが、不思議なつながり感があったり、ぽつぽつと出てくる言葉に誰かが応えている場面をみていると、「手を動かす」は「身体を使う」のひとつで、大事な要素なのだと感じました。

作り上げたものを実際にみんなで試すことができませんが、こんな風に使ったらよさそう!というアイデアをチャットで共有することで、広がりを感じる時間でした。グループで活動することはできなくても、「手を動かす」ことで、一人ひとりの中で何かが動き出し、それがオンラインの場に「動き」をもたらしてくれたように見えました。

逃げ場がない

オンライン上で小グループに分かれると、楽しい連帯感が生まれることもあれば、「逃げ場がない」という怖い部分もあります。

オンラインコミュニケーションツールのzoomを使った場合、自身でメインルームに戻ることはもちろんできますが、小さい空間に少人数でいることで「話さなければならない」というプレッシャーは対面のプログラムよりもありそうなので、PAJでも丁寧に扱っているところです。それはお互いの間合いが読みづらさが影響していそうです。

プログラムを作る側は、オンラインの小グループにわかれることがプレッシャーになる人がいるかもしれないということに自覚的でいたいと思います。

よりよいものを

オンラインでもオフラインでも、PAJスタッフは常によりよいものをつくろうとしています。近くで見ていて、そのことを強く実感しています。

最初はコロナウィルスの蔓延という現実に沿って始まったオンラインですが、今後の世の中でオンラインから離れて生活することは考えられないことからも、とてもよい機会です。それでも、私の中ではまだ「オンラインかぁ…」という気持ちが拭えないでいます。

(#02に続く)

※PAJが大切にしたいこと https://www.pajapan.com/aboutpaj/missionvisionvalue/

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