インタビューvol. 108「アドベンチャーの核を守る 」

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日本でも大人気の「ウブンツカード」(日本ではPAJが販売)を生み出した「High 5 Adventure Learning Center」(アメリカ・バーモント州)エグゼクティブ・ディレクターのジム・グラウト(Jim Grout)。かつてはPA, Inc. (アメリカ本部)のファシリテーターとして来日し、プログラムをしてくれたこともありました。45年以上アドベンチャー教育に関わるジムにお話を伺いました。


High5が大切にしているもの

ーーHigh5ではどのようなことを大切にしていますか?

High5のミッションは、アドベンチャー教育を効果的な教育ツールとして使って、個人、学校、チーム、コミュニティがよりよく生きること、学ぶこと、共に活動することを目指しています。

大きなプロジェクトとしては、ニューハンプシャー州キーンの「Edge of Leadership」という大規模な学校研究プロジェクトを受託しています。

私たちは若い人が育つことと、彼らを助ける人材の育成に関わることに焦点を当てて活動しています。

また、数年前、レジャー用アドベンチャーパーク建設には参画しないと決断し、教育用のチャレンジコースだけをつくっています。

私たちは非営利団体であり、私たちの考えや活動に賛同してくれる人の寄付を募ることができます。「Edge of Leadership」プログラムも、C&S Wholesale Grocersという会社が大きな支援をしてくれています。彼らの支援によって、私たちと地元の学校にとって多くのことが可能になりました。

アドベンチャーとの出会い

ーー「アドベンチャー」と出会いは?

私のバックグラウンドは教育です。大学では初等教育を学びました。大学院では、学校、コミュニティ、カウンセリングを学び、最初に得た職は、ランドマークスクール(Landmark School)という、識字障害の子どもたちの学校でした。

その学校では若いスタッフが生徒とチャレンジコース(アドベンチャー教育で使用される体験施設の総称)でプログラムをしていたのです。ある日、私が教室で生徒の学習を見ていたときに窓の外を見ると、生徒がジップラインを滑っているのです。あれは何だ?!と(笑)。

学生時代に28日間のアウトワードバウンドのプログラムに参加したことがあるので、チャレンジコースのことは少し知っていましたが、チャレンジコースが学校にあるなんて知りませんでした。

校内のチャレンジコースについてもっと知りたいと思ってスタッフにきいたところ、「よかったらトレーニングを受けて、手伝わないか」と誘われ、PA, Inc. を紹介されました。

1977年、私はPAの5日間のワークショップに参加して、PAそのものと、PAが生徒や教師に対してしていることが大好きになり、まさに自分にうってつけだと思いました。学校で先生をしていると、教室の中で科目を教えますが、アドベンチャー教育は、より人が人として育つ、グループとして作用することを学ぶことができるという点でより興味を持ちました。

2回目 のPA講習を受講したあとだったと思いますが、PA, Inc. から「National Trainer Network」に誘われ、その後、認定トレーナー(National Certifined Trainer)として、1977年から1987年まで、コミュニティセンターで働きながら、パートタイムでPA, Inc. で働きました。

1990年代ジム来日

人が成長する場

ーーなぜこの業界で長く働いているのですか?

私は学校でlanguage arts(言語技術)、主に英語を教えてきました。教えるのはとても楽しかったのですが、人として成長することにより興味を持っていました。アドベンチャー教育はとてもパワフルな教育ツールで、人が成長し、グループが成長するのを助けます。

先程話した「Edge of Leadership」プログラムでは、「自分たちには“声”がある」ということを感じることを大切にしています。私たちのモットーは、「人とつながること−エンパワーすること−彼らを導くこと」です。私たちは参加者が自分自身を超えて、他者や共同体についてもっと考えられる支援をしています。

若い世代の人たちがどのように自分のことを考え、他者のことを考え、集合体としての「公益(common good)」をつくり、どのように助け合えるかを学ぶ場なのです。私はそういうプログラムに関わることができて、とても嬉しいですし、大きな喜びがあります。私たちはこの地域の5年生〜12年生に関わるようになって8年になります。長期間、多くの人にアドベンチャー教育をフルに活用する機会に恵まれ、私たちも多くの学びを得ました。

さまざまな国でプログラムをしましたが、どこの国や文化の人でも、共通の人間性を持っています。人間が共通して持つニーズがあり、お互いを大切にすること、つながることが生まれます。そして私たちが提供しているアドベンチャー教育はそれを育てることができるのです。共に活動する中で、私たちが共通して持っている核の部分に触れることができるのです。

その意味でアドベンチャー教育に出会ってからは、他の分野や場を考えたことはありませんでした。私はこのフィールドにいることにとても幸せを感じています。この仕事に出会えたこと、人として持っていることは同じであると信じられることが幸せです。

私は一度も「仕事に行く」と思ったことはありません。私は自分のしていることや仕事を愛し、自分自身であることを愛しているからです。

深い関わりを大切にする

「Edge of Leadership」プロジェクトは、8年続いています。現場には4人のスタッフがいて、日々、学校のプログラムをつくっています。定期的にプログラム評価を行い、改善していっています。このプロジェクトはHigh5にとってギフトです。ここでつくり上げてきた私たちの文化はとても力強いものです。

私は大きなカンファレンスで大人数と短い会話をするよりも、少人数で深い話をすることを好みます。私が働く中で「広く」と「深く」から選べるとしたら、私は「深く」を選びます。High5もそういう「深い」場所になっていると思います。

コロナの中で

コロナの中で、今まで通りのプログラムはできていません。かつては月に700人の子どもや教育者が私たちのチャレンジコースに来ていました。オンラインプログラムは、今まで私達がやってきたこととは全く違うものです。でも私たちはそこに何らかの価値や喜びを生み出すことができます。

世界がHigh5やPAJのしていることを今まで以上に必要としています。人々はつながりと、共に達成することの喜びに飢えています。私たちはこの世界で単に生き延びることだけでなく、このパンデミックな困難の中で、目標に向かって力強くいることが大切です。私たちはいま世界がひっくり返っている中で、人々が必要としていることを助けることができるのです。

人は他者とうまくやっていきたい、つながりたい、お互いに意味があるものでいたいと思っています。みんなで生き抜き、いろいろなことが戻ってくる日が来るでしょう。でもそれには時間がかかりそうです。

カールとジム

カール・ロンキとの時間

ーーアクティビティの神さまと言われているカール・ロンキ(Karl Rohnke, PA, Inc. 創始者の一人)との出会いは?

1977年、私が受講した最初のAPワークショップのファシリテーターがカールでした。その後、私はPAトレーナーになり、PAで、その後はHigh5で、カールと一緒にワークショップをリードしていました。本当に楽しい日々でした。共にワークショップをした人としてはカールが一番長かったと思います。

彼はポジティブな人で、存在感があります。そして、教育についてのインスピレーションと刺激的なアプローチをたくさん持っています。

ーーカールのAPを覚えていますか?

とても素晴らしくて、独特のちからがありました。いまではありえませんが、5日間のワークショップの4日目にはロープスコースを出てロッククライミングに行きました。その頃は今よりもゆるやかで、「全てを教えなければならない」ということもありませんでした。

その頃、ワークショップの参加費は現金で支払っていました。朝食と夕食はついていましたが、昼食はお金を出し合って、参加者の誰かが買い出しに行っていました。信じられないかもしれませんが、それで全てうまくいっていました。当時のワークショップには、柔軟性があり、穏やかな流れがありました。そしてただただ、刺激的でした。

カールとジム(同じ日に撮影)

ーーカールから学んだことは?

たくさんのことがあり過ぎます!私はいつも彼が「学びへの誘い(Invitation to learn)」という環境をつくっていると感じていました。

私たちは「知らないと感じる必要はなく、まだ学んでないだけ」なのです。彼はいつも「あなたは、もちろんできるよ」と言っていました。あなたはこの木に登れるし、このプログラムもできると伝えていました。それはなんて素晴らしい、寛大な教育アプローチだろうと思います。

彼は素晴らしくクリエイティブで、彼には他の人が見えないものが見え、彼の創造性にはスピリットがありました。彼はいつも嬉しそうで、楽しんでいて、教育にスピリットと情熱を持っていました。

彼はいつも自分が好きなことをやっているだけで、それをみんなも好きなんだと言っていました。彼は自分中心的なところが子どものようですが、そうではないんです。彼は自分が幸せだと感じることをしていて、それが周りも幸せにしていたんです。

カールは大きなハートを持っていて、学びの中に喜びを生み出す人です。面白くないアクティビティを面白くすることができましたね。ちょっとしたひねりを入れることで、とたんに面白くなるのです。

カメレオンになる

私はいまは役割が変わり、あまりファシリテーターをする機会がなくなっていますが、プログラムの現場を見に行ったり、付き添いの先生たちと話したり、プロジェクトをやっている学校に行くと、いつも刺激を受けます。プログラムを見ると、自分たちが何のために活動しているのかよくわかります。

ーーファシリテーターとして大事にしている信念は?

ちょうどそのことについてブログを出したところです。それは「カメレオンになること」です。「いかに自分がグループの必要としている者になることを、自分に許せるか」です。

10年間行っている警察のプログラムがよい例になると思いますが、警官の世界というのはとても独特な世界です。何らかの方法で「彼らになる」ことで、受け入れてもらえます。日本の警官のことはわかりませんが、彼らはなかなか外の人間を受け入れることをしないのです。

グループに自分を合わせることを、誠実ではないという人もいます。でも、私は彼らが成長し学ぶための助けとなるために、彼らが必要とする方法に私自身を合わせます。まるで彼らのようになるのです。そうすることで相手が私を受け入れてくれ、彼らが行けると思っていなかった場所へと導くことを、彼らが受け入れてくれるのです。

その人たちのために、そこにいなければなりません。あなたのためではないのです。あなたはグループのニーズのためにいますが、その中で自分らしくいることも、誠実でいることもできるのです。カメレオンになったとき、よいことが起こるでしょう!私が保証します!

High5のメンバーと

(20200909)

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