PAJ(プロジェクトアドベンチャージャパン)非常勤ファシリテーターのヒデ(高橋秀典)は、群馬県みなかみ町でレイクカヌーツアーを行う「レイクウォーク」を経営しています。アウトドアガイドとファシリテーターとしての経験を生かしながら地域の活性化を目指しています。


PA(プロジェクトアドベンチャー)との出会い

みなかみ町で高校生の団体を受け入れるために、PAを知っている人たちが体験会をしてくれたときに、アウトドアガイドたちと一緒に参加しました。のちのち気づいたことですが、PAをやることで自分が人間として成長をすごく感じられてのめり込んでいきました。みなかみ町でこういうプログラムができるようになったら、地域としてもハッピーだろうと思いました。

アクティビティが現実の世界につながる瞬間

僕が衝撃的だったのは目が見えない状態で課題を解決する「ブラインドスクエア」をしたときでした。目が見える人が1人いて、残りのメンバーは目をつぶった状態でロープを四角形にするというアクティビティです。

そのとき僕は目をつぶっていて、何かをやろうとしたら、自分の思考が停止したんです。目が見えている人がいるから、その人に任せればいいと思いました。そのときはそれしか方法がないと思っていたけれど、実際にはそうではないんです。見えない人なりの何かをやれる方法があるはずで、それがなければ何も解決しないんです。

仕事に置き換えてみれば、やったことがないからと言って発言しないとか、言われたことだけやっていればうまく組織が回るということではない。そういうことがメタファーとしてつながるところが面白かったです。

PAは、アクティビティの種類やルールによって、活躍する人や前に出てくる人が違うということを体験的に知ってもらえる、気づいてもらえることがいいですね。人それぞれの価値観、考え方、バックグラウンドがあって、お互いに尊重し合うことによってシナジーが生まれ、新しい発見ができます。

アウトドアガイドとファシリテーターの違い

アウトドアガイドは、状況判断や安全管理について普段から意識しなくてもできて、その先に起きるかもしれないリスクを察知する洞察力があります。ガイドにはそれぞれに自然に対する世界観や個性がありますが、参加者をガイド自身の世界に誘導し過ぎたり、引っ張りすぎてしまう場合があるところは気をつけなければいけない点です。

かたやPAのファシリテーターは、最終的に僕たちはいない存在になった方がいいと思っています。ファシリテーターの仕事を始めた最初の頃はPAをやっていても、「オレが楽しませてやったぜ」という気持ちが若干ありました(笑)。でもそれが空回りして、なんとかしてやろうとか、こうなって欲しいと思えば思うほどうまくいかない経験をすごくしたんです。

アウトドアの仕事もそうですが、主役は参加者です。参加者がどういう風にありたいか、なりたいかということを考えられるようになるまでは、ある程度引っ張るところはありますが、その後は、参加者たちがどうしたいかを見守りながら、関わり方を調整していきます。最終的に参加者それぞれが仲よくなって、あのときの掛け声がよかったよと話したりしながら帰る場をつくれるところが好きです。

経営者として、ファシリテーターとして

ファシリテーターとしての職人的な能力はもちろん学んでいきたいですが、僕はいま、ファシリテーターとしての成長よりも、経営者としての成長に興味があります。いまは地域や組織がいかにうまくいくか、皆さんがやりたいことをどうつなげていくかということに関心があります。

僕の会社のスタッフの育成にもPAを生かしています。僕がPAを学ぶ前と学んだ後では組織は全然違います。以前はあれやって、これやってと、僕が何でも指示していました。でもいまは待てる(笑)。効率性よりもその人がどう気持ちよくやれるかということを大事にしています。

速くやれたり、すぐやれるのが100点ではない。短いスパンで考えるのか長いスパンで考えるかなんです。この先の3年、5年、10年を考えると、余計にそんなちっぽけなことどうでもいいやと思えるようになりました。それぞれの人の学びのスピードやタイミングもあるし、誰に言われるかによっても変わります。

待つこと

僕は何でも速いんです。うちの子にも「最後まで話を聞こうよ」と言われるくらいせっかちというか速い(笑)。それがいい意味のときもあるけれど、逆に組織とかチームには悪いこともあるので、そういう意味では「待つ」ということと、「いろいろな人がいる」「人それぞれの特性や得意なことがある」ということを大切にしています。

あるプログラムでもノリが悪くて盛り上がらない人たちがサイクルタイムというアクティビティをやっていて、すごく速いタイムが出ました。内なる闘志があるんだな、そういう人たちもいるんだなと思いました。僕はいつでも元気のいい人がいいのかなと昔は思っていたけれど、一概にそうではない。人それぞれだなということを学んできました。

問いかけ

もっと成長したいところは、質問、問いかけ方です。僕はざっくりし過ぎているので、うまく問いかけができていない気がします。「どうだった〜?」など、ざっくりきいてしまうので、きかれる側が困ってしまうこともあると思います(笑)。もっともっと耳を傾けられる、しかも発言しやすい環境をつくっていきたいので、最近、ツイッターで毎日問いかけを発信して、問いかけを学んでいます。

いまの僕のテーマは「心穏やか」です。これからは心穏やかにして、いい振る舞いや発言をしていかないと、うちの会社も経営者としての僕もこれ以上の成長がない気がしています。

そのために心身を整えるために筋トレをしたり、生活リズムを変えたりしながら、なるべく心穏やかに笑顔でいることを心がけています。スタッフがミスしても受け入れることさえできれば、その対処法を考えればいいだけです。起こったことがくつがえるわけではないから、穏やかにいて、対処していくことが大切です。穏やかにいながら、今後のサービスを考えていくことが楽しくて仕方ないです。

(20190116)

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